FUJI ROCK FESTIVAL と TOWER RECORDS の環境活動

SPECIAL

今年、苗場開催25回の記念開催を迎える日本を代表するフェスティバルFUJI ROCK FESTIVAL。実は、フジロックにおけるタワーレコードと環境NPO”iPledge”(旧A SEED JAPAN)のパートナーシップによる本格的な活動も苗場開催年からということで、今回の25thはその記念回でもあります。(第一回から現在まで参加している企業は唯一タワーレコードのみ)

1997年富士天神山スキー場での台風が直撃した開催から、フジロックを継続するために! との思いで、2年目の豊洲ベイサイドスクエアではパートナーシップを結び共同でゴミ袋の制作と配布をスタート(この時点ではまだ試験的な取り組み)、1999年の第3回、苗場開催から本格的に入場ゲートでのオリジナルゴミ袋配布、隣接するブースで回収や分別のキャンペーン、タオルなどのノベルティのプレゼントをスタートしました。

(第2回豊洲ベイサイドスクエアの会場で撮影されたNO MUSIC, NO LIFE.ポスター「KEMURI & A SEED JAPAN」 まだゴミ袋が市販の物。)

それ以降、ステージエリアの拡大や、自然エネルギー導入への取り組み、フジロックの会場でもある森の保全など活動内容を広げながら続いてきたフジロックとiPledgeとタワーレコードのパートナーシップ。今回は苗場25th=本格的な活動25th ということで、現在のiPledgeのコアスタッフの方にインタビューを実施。これまでの振り返り~今後の取り組みについてお話をうかがいました。

(左から、濱中さん、山口さん、山室さん、風呂さん)

 

–––– それぞれの自己紹介と、どうしてiPledgeに関わるようになったのかから教えてください。 

山口 iPledgeもフジロックも2016年から関わっています。大学院を出て、ずっと京都を拠点にしたNPOで活動していて、そのNPOが東京にも進出することになって東京に引っ越してきました。半年くらいしてからアースデイ東京の事務局に移って、2016年のアースデイ東京が終わってどうしようかなって思っていた時に、濱中から誘ってもらったのがきっかけで、iPledgeで活動するようになりました。

 

山室 2017年のアースデイ東京でのボランティアが最初でした。その年のフジロックにも行って。当時は高校3年生で「RADWIMPSを見たい」っていうのが大きくて、ボランティアをしながらライブも見れちゃうっていう感覚での参加でした。環境を守りたいとか、世界をどうにかしたいっていう気持ちというのではなく、ボランティアには興味があるし、とりあえずやってみようかっていう。実際フジロックに参加してみたら、他のボランティアさんたちが本当にかっこいいし、いろいろ教えてもらっていく中で、楽しさを見出せたんですね。それでその秋にコアスタッフの説明会に参加して、そのままコアスタッフになりました。

 

風呂 まだ大学生なんですけど、UAが好きで、UA目当てて去年のフジロックに行ったんです。ペットボトルが山のように積み上げられているのとか、ごみ袋をボランティアの方々が配っているのを目の当たりにして、「この団体って何をしているところなの?」って思って。もともとビーガン料理店でバイトしていたこともあって、環境問題に関心があったんです。それで説明会に参加して、イベントなどにボランティアで参加するようになりました。

 

濱中 フジロック苗場初開催の時が高校2年生だったんですね。フジロックっていうものがあるっていうことをぼんやり知ってはいたんです。iPledgeの前身であるA SEED JAPANに、総合学習という高校の授業の一環で取材に行ったんです。帰り際に、当時は髪が長かったこともあってか「音楽が好きそうだね」っていう話になって。帰り際に「フジロックでボランティアがあるから来なよ」と誘われて。それで募集要項をもらって高校生ボランティアに参加したんです。そこである種のカルチャーショックを受けて、翌2000年も高3で参加して。高校卒業後の2001年にコアスタッフの説明会に行って、コアスタッフになりました。

(昨年のフジロック開催前々日。毎年、入場ケートで配布する約10万枚のゴミ袋をトラックから降ろしています。)

 

–––– フジロックでは、どのくらいの人数がごみゼロナビゲーションのボランティアとして稼働しているのですか。

山口 ここのところは、コアスタッフが40名、一般のボランティアさんが120名。計160名です。

濱中 もっとも多い年では260人くらいいましたから。

 

–––– 学生の方が多いのですか。

山口 実は大学生はそんなに多くないんです。10人にひとりくらい。ちょうどフジロックの時期がテスト期間という大学が多くて。

 

–––– かつてはボランティアの希望が多かった理由はなんだと思いますか。

濱中 多かったのは2000年に入って数年間。若い世代が参加したいと思えるボランティア活動が少なかったのかもしれないですね。今は自然災害のボランティアも含め、ボランティア募集が世の中にたくさんありますから。

山口 16年からしかわからないですけど、フェスに興味があるというよりも、ボランティアに関心がありますっていう人が多くなっている印象です。「フェスも、アウトドアもしたことがないんです。ただイベントが楽しそうだから参加してみました」という方が増えているように思います。

山室 私が入った頃は、フェスが好きっていう人が多かったです。みなさん年上でしたけど。私の同世代は環境問題に興味があるとか、自分で何かをしたいという人が多いと思います。実際、自分で団体を立ち上げた方もいます。

 

 

––––  それぞれのフジロックの思い出は?

山室 2018年と2019年の大雨が強烈過ぎて。初めてのコアスタッフで、雨でごみもたくさん出て、その運搬もすごく大変で。ごみゼロステーション(会場内に点在するごみを分別回収しているブース)にずっと溜めておくわけにはいかないので、ボランティアさんと持てるだけのごみを持って集積所に運んで。「雨の中、行くぞ!」って気合いを入れて。しかもその頃はごみゼロステーションに屋根がなかったんですから。

濱中 屋根 がないっていうことが、フジロックでは当たり前だったんですよね。雨が降ると集中力が続かないし体力も削られる。コロナ以降、テントを建て、その中にごみゼロステーションを設置してもらっています。

山口 フェス当日を迎えると、NGOビレッジにいることが多かったです。外国人のお客さんもたくさんブースに立ち寄られていて、「フェスだけれど、社会問題に興味を持って参加してくれる人がこれだけいるんだ」っていうことが新鮮な驚きでした。

濱中 フジロックではないのですけど、この春のイベントでは、ごみゼロステーションの写真を撮ったり、動画でごみをごみゼロステーションに持っていくシーンを自撮りしている外国人の姿を見かけました。日本のイベントでのごみの分別に興味をもって、おそらくSNSなどにあげているんでしょうね。

 

–––– ずっとごみゼロをフジロックでやってきて、どんな変化を感じていますか。

濱中 タワーレコードさんのタオルをノベルティとしてブースで配付している活動もあるんですけど、振り返ってみると、その遍歴も時代とともに移り変わってきているんだなって思います。

 

–––– その遍歴というのは?

濱中 最初の頃は「空き缶を拾ってごみ袋に入れて持ってきてね」。それがほどなくして空き缶からペットボトルに変わって、その次はタバコの吸い殻になって。タバコの喫煙マナーも守られるようになってきて、ごみがほとんど落ちていないっていう状況になりました。それでコロナ前までやっていたのが、ペットボトル本体とラベルやキャップの再分別を手伝ってもらうこと。それでコロナになって、誰かが口をつけたごみをお客さんが触るのは良くないっていうことになって、ポイ捨てされたごみって環境にも良くないよねっていうような勉強するようなブースに変わっています。つまり、「ごみを持ってきてね」から始まって「リサイクルを手伝ってもらおう」に移行して「日常に習慣なり知識を持ち帰ってもらおう」へ。

 

 

–––– iPledgeはいろんなフェスやイベントで活動を行っていますが、やはりフジロックは特別なものなのですか。

濱中 ボランティアさんが宿泊までも伴うというのは、フジロックと春に宮城県で開催されるアラバキくらいなんです。環境に関心がある人も、フェスが好きっていう人も、ボランティアさんの中にはいます。そんないろいろな好きを持った人たちが、同じ班になって3泊4日、衣食住をともにする。自然と混じり合っていく。それがiPledgeのフジロックでの活動なのかなって思います。フジロックそのものを全力で楽しまないと、ごみの活動を全力でやれないと思うんです。フェスを楽しむことと活動を両立させる。そのレベルがフジロックは高いんだと思いますね。

 

–––– そんなことをボランティアさんのオリエンテーションでは説明していくのですか。

濱中 「会場の雰囲気を作るのはあなたたちひとりひとりだよ」というような話はしますね。「ごみに関するボランティア活動ではなく、人とのコミュニケーション活動だよ」とも伝えます。なかなかお客さんに声をかけられないという人もいるので、そういう人には背中を押してあげて。ちょっとした勇気を出して、ちゃんと話したり接したりしていれば、みなさん聞いてくれる。「世の中を変えられた一言を言えた」というような感想を言ってくれるボランティアさんも多いんです。

山室 大学生を見ていると、すごくコスパとかタイパを気にしているように感じます。それはボランティアとして来る人も。確かに、私自身でもミーティングではズームは便利でだし、移動しなくていいし。でも体験することの良さってやっぱりあるんですよね。会うことの大切さってあるんです。フジロック当日は、効率を重視するだけでは得られないライフバランスを向上させる様な充実感もある、ということを届けられたらなって思っています。

濱中 新しい体験をしていく。それがコロナの時代に薄くなってしまったと思うんですね。フェスに実際に行かなくとも後で映像で見ればいいじゃんっていう人たちもいる。ライブに興味がないボランティアさんもいる。だけど一回体験してみれば、違う角度から考えられるようになったら、人生はもっと楽しくなるし、豊かになるよ。人との繋がりも生まれるよ。そんなことを伝えていければいいと思っています。

 

–––– それらが、iPledgeが掲げる「From Festivals to Your Lifestyle」につながっているのですね。

濱中 フェスで感じたことを日常へ。フェスの中ではそれを伝えていくことが iPledgeの役割なんだと思っています。そしてボランティアさんには、イベントでのいろんな体験を通して何かを受け取り、次のステップへつなげていってもらえればと思っています。

 

–––– ありがとうございました。

 

(濱中さんが持っているのは初めてデザインを大きく取り入れた2002年、横尾忠則さんデザインのゴミ袋。山口さんが持っているのは苗場開催2回目の年に配布されたゴミ袋。山室さんが持っているのは2015年までの活動を記録したiPledgeデザインのゴミ袋。風呂さんが持っているのは、現在渋谷駅にある岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」を日本に持ち帰るプロジェクト「Be TARO!」のスタートとなったデザイン。コピーは糸井重里さん。)

今年のゴミ袋は3種類。入場ゲートで配布しています。2021年から、配布されるゴミ袋は、それまでの前年回収されたペットボトルをリサイクルしたものから、非食用米を使用した国産バイオプラスチック製になっています。石油資源の節約とCO2削減に貢献する環境にやさしい袋です。

(今年のタワレコのデザインは、昨年同様グラフィックデザイナーMakoto Yamakiさんによるハンドレタリングのイラストデザイン。富士山、新潟県の県鳥トキ、苗場開催25回を祝うダルマがモチーフになっています。)