【LIFE MUSIC. ~音は世につれ~】第16回 矢沢永吉さんの「よろしく」によろしく by 渡辺祐

渡辺 祐
イラスト 竹内 俊太郎

ESSAY / COLUMN

〈NO MUSIC, NO LIFE.〉をテーマに音楽のある日常の一コマのドキュメンタリーを毎回さまざまな書き手に綴ってもらう連載〈LIFE MUSIC. ~音は世につれ~〉。今回のライターも渡辺祐さんです。 

 某サプリメントのCMにまさかの永ちゃんが(2022年2月時点)。主に加齢による劣化を防ぐというサプリ。そこに矢沢さん。最初に見た瞬間は、その意外性に「ここでそうきたか」と思わず声が漏れました。でも、次に見たときにふと思ったのですね。CMコピーの「実感年齢」なるものに、こんなに相応しい人はいないのではなかろーか、と。

 矢沢永吉さんはカタチを大切にする人だと思うのです。漢字で書けば「形」であり「貌」。

 あれは忘れもしない1972年、ワタシたちの視界に矢沢さんが現れたとき、つまりキャロルのデビュー時の「革ジャン・リーゼント」も、デビュー前のビートルズに近い不良っぽさを演出するためのセルフ・スタイリングだったという逸話は有名であります。そのスタイルとロックンロールな音楽性がマッチしまくった結果、自動二輪系不良の皆さまへの共感度数たるやですね、そりゃもう凄まじいものがありました。ワタシのような自力二輪系(自転車です)かつ文系の中学生は、ちょっと引いてたぐらいに。いや、キャロルの曲は大好物だったんです。文句なくかっこいい。でも、自動二輪(主に違法改造)が集まっちゃうような「現象」について行けないかもボク、という中流サラリーマン家庭の子なのでありました。

 その後、ソロになってからも、バイク、オープンカー、ジャケット、サスペンダー、シャツ、ベスト、かのマイクスタンドなど、どのパーツも揺るぎない。E.YAZAWAのロゴも揺るぎない。変えません。キャリアの中での変遷はあるものの、「らしさ」の維持力半端なし。もうカタチというよりは「型」です。

 その「らしさ」の象徴である「よろしく」をCMにて拝聴する2022年。矢沢永吉、72歳。同じ会社の長年続いたビールのCMでも使っていなかった(ですよね?)、まさに伝家の宝刀をここで抜くのか、ここでそうきたか。

 加齢というのは、不意打ちを食らわしやがります。老眼しかり、歯の隙間しかり、腰痛膝痛五十肩しかり、頻尿しかり(以下省略)。「あれ?」っと思ったときには、それこそ実感年齢をあおり運転気味に追い越していきますね加齢。そして追い越された回数が多くなればなるほど、「実感年齢<実カウント年齢」という具合に形勢逆転、しょうがないから守りの姿勢に入ることでそれ以上の失点を鈍化させようとする。時間よ止まれ。これが一般的な老年の第一歩目です。実体験です。

 そんな一般論にKOされることなく、若かった頃から続く、ファンが望む「型」を崩さないで立ち続けることを選ぶ。見た目だけの話じゃないですよ。アイデンティティの話として。そのためには、何かしらの努力もあるかと想像します。「努力なんて言葉はかっこわるいけど」と横山剣さんが歌っていますが、「努力なしにそれはなし得ぬもんだよ」(Ⓒ横山剣)。

 恐らく矢沢さんの努力は、「守る努力」じゃなくて「攻め続ける努力」。守るために攻める(ロシアのことじゃないよ)。そう言えば、2010年代を前に、いち早く自主レーベルを立ち上げてビジネスモデルをチェンジしたことも思い出します。「型」があるからこそ、意外性もOK。

 「実感年齢」というのは、CMとしてうまいコピーだと思いますが、矢沢さんの実感年齢的存在感は、その思惑を越えて迫り来る。

 実感年齢でいきますか。

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編集者、DJ 渡辺 祐

1959年神奈川県出身。編集プロダクション、ドゥ・ザ・モンキーの代表も務めるエディター。自称「街の陽気な編集者」。1980年代に雑誌「宝島」編集部を経て独立。以来、音楽、カルチャー全般を中心に守備範囲の広い編集・執筆を続けている。現在はFM局J-WAVEの土曜午前の番組『Radio DONUTS』ではナヴィゲーターも担当中。