【LIFE MUSIC. ~音は世につれ~】第20回 日本にROCK魂をもう一度! 忌野清志郎をこれから知る人へ by KTa☆brasil

ESSAY / COLUMN

〈NO MUSIC, NO LIFE.〉をテーマに音楽のある日常の一コマのドキュメンタリーを毎回さまざまな書き手に綴ってもらう連載〈LIFE MUSIC. ~音は世につれ~〉。今回のライターはKTa☆brasilさんです。 

 2022年、盛夏。元気ですかー?!(アントニオ猪木さん風に)

 老いも若きも情熱的になる季節。フェスで、お出かけで、日常の心の中で、思いっきり歌いたい曲は何ですか? 個人的には南米ブラジル各地や大ラテン圏のオススメ曲を、と言いたいところですが、今回は海外でも自慢できるアーティスト 忌野清志郎さんについて。

 今、とにかく元気に前向きになれるアンセムが必要。多様性と痛快なユーモア。自分に、他人に嘘をつかない、心に刺さる歌。

 清志郎さんと言えば「JUMP」や「雨あがりの夜空に」、「僕の好きな先生」、「スローバラード」などが思い浮かぶ歌でしょうか。僕自身、『MTV』や『M ON!』などの音楽番組でMCをしていた時代は、正直なところ清志郎さんのことをまだ良く知らず。子供の頃にテレビで見た坂本龍一さんとの「い・け・な・い ルージュマジック」でのパフォーマンスや、テレビ番組『笑っていいとも!』のコーナー「テレフォンショッキング」で、タモリさんが電話した時に寝ていて出ないナドナド、「なんだこの人?」というイメージが先行していて、真意を知らず、あまり好きではなかったくらい。

 しかし、特に福島の原発事故以降、黒塗り文書や嘘、不正、そして分断が横行する日本、そして世界的情勢から、清志郎さんの数々の歌は、ファッションは、態度は、「今も色褪せることのない示唆と普遍性にあふれていているんだ」「こんなにも昔からこういうテーマを歌っていたのか」と、遅ればせながら気づくようになりました。こういう“モヤモヤする不信感の時代”だからこそ、ハっとさせられ、気づかされ、元気をもらえて、今を生きる僕たちに必要なヒントが「沢山あるよなー」と痛感するのです。

 例えば、ジョン・レノンの日本語カヴァー「IMAGINE」やHISの「日本の人」、「世間知らず」、「パパの歌」、「Baby#1」、色んなメッセージソングがありますよね。米国ではニール・ヤングやエリック・クラプトンなどが社会問題を歌い、世界中でスティングやマヌ・チャオたちに呼応する次なる若手世代アーティストもこの10年で増幅中。ウクライナやロシアからの移民も多い”世界一の多人種移民×混血大国=ブラジル”では、ジルベルト・ジルやマルチーニョ・ダ・ヴィーラなどの大御所MPB世代に限らず、若手の社会派ラッパーや前衛ミクスチャーバンド、そしてブラジルのレジスタンス社会文化であるサンバやファンキのアーティスト、さらに『リオのカーニヴァル』までもが”民衆力の希望と急速な支配的社会への抵抗力と信愛”を見せています。

 僕自身といえば、コロナ禍でブラジルからの帰国を余儀なくされ早2年。日本からブラジルの番組に出演を続ける一方、生まれ育った日本社会や自分を、改めて見つめ直すことが少なくありません。大変だし、辛い。でも真実を見て、皆で解決し、助け合って、前向きに生きていかなくてはいけない世の中。
 そんな中で清志郎さんの痛快さや笑い、ユーモア、スピリット、ストレートなメッセージや態度は、いよいよ僕たちに力強く訴えかけてくるのです!

 

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打楽器奏者・指導者 KTa☆brasil(ケイタブラジル) LINK

東京生まれの日本人打楽器奏者・指導者。プレゼンター。Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100」他選出・受賞・殿堂刻銘者。米国の現場を経て90年代に10代より単身サンバの本場リオデジャネイロで活動を開始。世界各地で出演歴。ブラジルを代表するポップアイコンAnittaやサンバ界のレジェンドArlindo Cruz、Moacyr Luz他と長年共演。三浦大知からDuran DuranのSimon Le Bonの楽曲までレコーディング参加曲や出演・寄稿は多岐にわたる。