本当に大切なこととそうでないことの違いが見えづらい時代、
音楽のある風景はそんな僕らのハッピー&ブルーに寄り添い、
人生とは音楽の旅のようだと感じさせてくれる。
(橋本徹/SUBURBIA)
MAKING
橋本徹メイキング
「NO MUSIC, NO LIFE.」の撮影レポート!
今回登場するのは…編集者および選曲家そしてカフェオーナーとして活動する橋本徹さん(SUBURBIA)。
記念すべきコンパイラー人生30周年を祝う最新コンピレーションアルバム『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE “Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme”』を2月にリリースしたばかり。
…今回のメイキングは、実はタワレコとも深いかかわりのある橋本さんをご紹介する内容にさせていただければと思います。
今回の撮影は、渋谷と原宿の間、ファイヤー通りの「Cafe Apres-midi」。
名前を聴いてピン!と来た方、そうですコンピレーションシリーズのタイトルにもなっておりますが、1999年渋谷・公園通りにオープンし、カフェ・ミュージック、カフェ・ブームを牽引し、日本の店舗選曲におけるひとつの転換点の象徴にもなったお店です。
2014年4月に現在の場所に移転、来年10周年でもあります。コロナ禍を経て現在は週末のみ営業中とのこと。
冬晴れの日の午後、まさにいい音楽でも聴きながらカフェでくつろぎたい…そんな日に撮影が行われました。
橋本さんとタワレコの関わり…の前に、ご存じない方に橋本さんの経歴をご紹介。
大学卒業後出版社に入社して、編集者として仕事をする傍ら、1990年の10月にUKソウル~グラウンド・ビート、アシッド・ジャズ、映画音楽やサントラ、ジャズやムード音楽、ラテン・ジャズ、ブラジリアン・ジャズを音楽マニアやコレクターに対してではなくフラットな視線でスマートに紹介した「Suburbia Suite」フリーペーパーを創刊。
レコードショップやCDショップ、ピチカート・ファイヴやオリジナル・ラヴ等の「渋谷系」と総称されるようなアーティストたちのライブで配布され評判に。
その後、渋谷のDJ Bar InkstickでのDJパーティー、TOKYO FMでの「Suburbia’s Party」という番組を経て92年10月21日初めてのコンピレーションCD『’Tis Blue Drops; A Sense Of Suburbia Sweet』をリリース。
多くのリイシューのシリーズを監修し、1994年春に『Free Soul』シリーズがスタートしています。
最初の写真で橋本さんが持っているのが、そのFree Soulの第一弾リリースのジャケット。
1994年4月にリリースされたFree Soulシリーズ第一弾。
以前のSuburbia Sweetでのボサ~ソフト・ロック的な音源から、70年代のソウル周辺のメロウでグルーヴィな”黒っぽい”フィーリングで選曲されたシリーズがスタート。
同年5月にはさらに2タイトルがリリースされています。
ちょうど”渋谷系”と言われるジャンルが認知され始めた時期、ピチカート・ファイヴやオリジナル・ラヴ、小沢健二、コーネリアス等のアーティストとも橋本さんが交流があったこともあり、外資系のCDショップでも大きな展開が行われています。
このころには、渋谷のレコードショップのLPバッグを持って歩いている姿がいわゆる音楽好きだけではなく、若い音楽ファンや女性にも増えていた印象です。
実際に、渋谷系のアーティストたちが下敷きにしたであろう楽曲や、当時ブームになりつつあったACID JAZZ系のアーティストがカバーしている楽曲なども多く収録されました。
そして、このシリーズの面白いのはライナーノーツ。
Free Soulイベントに参加していたDJの方々と橋本さんの対談形式で楽曲やアルバムが紹介されており、やりとりの中にはクラブのフロアの反応などの記載もあるため、当時のシーンの現場の空気感が伝わってきます。
1995~96年に発売されたこちらのタイトルには、SMAPの「がんばりましょう」の元ネタとして有名な楽曲、ピチカート・ファイヴがサンプリングした楽曲、コーネリアスやカヒミ・カリィが下敷きにした楽曲なども収録。
Free Soulシリーズの特徴として、有名アーティストの有名楽曲のカバーなどの収録も楽しみの一つですが、スティーヴィー・ワンダーやアイズレー・ブラザーズ、カーティス・メイフィールド等のカバーも多数収録されています。
そして「Parade」「Lights」はなんと外資系店舗でも邦楽ジャンルでの1位を獲得も!
そしていよいよ(ようやく)タワレコとのつながりですが……
実は橋本さん、1996年の4月にタワーレコードのフリーマガジンbounce編集長に就任(1996年6月号~1999年4月号)。
約3年間このメイキングも掲載されているフリーマガジンbounceを制作しています。
当時の編集部には、現ライムスターのDJ JINさん、最近では星野源さんのNHKの番組「おんがくこうろん」でパペットの「かいせついん」として出演もしている高橋さん等が在籍。
渋谷エリアが世界一のレコードショップ数となりギネスに登録されたり、1998年はCDの売上が過去最高に達しています。
Free Soulシリーズも継続してリリースされています。
そして、こちらの「Air Groove」企画は編集部がbounce誌面で連載していたものがコンピレーションCD化されたもの。
ライナーノーツが4枚で起承転結のクラブで出会った男女のストーリー仕立てになっているのも洒落ております。
架空のFM局をテーマにしたこの企画は、後に橋本さんの別企画でもシリーズ化されました。
橋本さんがbounceに在籍していた時期までにリリースされたFree Soulコンピはこの3枚位まででしょうか。
これら膨大なFree Soulシリーズの楽曲からNMNLスタッフが選曲した「Free Soul 100」プレイリストも、タワレコのサブスク音楽サービスに公開しています。
100曲では収まり切れませんが…是非皆さんお聴きいただければと…。
1998年以降のFree Soulシリーズは…というと、
アーティストをテーマにしたシリーズがスタート。その後レーベルをテーマにしたシリーズ、BLUE NOTEやMOTOWNの周年を祝うアンソロジー系のシリーズがスタート……と続き、現在はサブスクサービスでもFree Soulのプレイリストを聴くことが可能です。
こちらは番外編。
BARNEYS NEWYORKの10周年を記念してタワーレコードと共同企画で制作されたFree Soul盤。
こちらはスリーブのついたものがBARNEYS NEWYORKの10周年パーティーのお土産になった他、若干数タワレコでも販売されたレア盤。
…タワレコと橋本さんの直接の接点はどうしても1990年代後半とFree Soulにまつわることが多いのですが、橋本さんは前述のとおり、1999年11月カフェ・アプレミディを渋谷にオープンし、カフェ・ミュージック、カフェ・ブームを牽引。日本の店舗選曲におけるひとつの転換点となりました。
その後も生活の中の音楽をジャンルや新旧ではなく、テイストで聴くスタイルを提案し続け、USENでの選曲や「Mellow Beats」「Jazz Supreme」「音楽のある風景」「Good Mellows」シリーズなどのコンピレーションをリリースし、現在はサブスクリプションやインターネットラジオでも選曲。
来年には『Free Soul』シリーズも30周年。活動30年間でオフィシャル・コンピレーションも350タイトル以上となり現在も更新中です。
現在まで350以上のコンピレーションを制作。間違いなく”世界一”かと思われますが…
カフェ・アプレミディでは、在庫のある様々なコンピなども購入できますので、是非週末にお出かけください。
(〒150-0041 東京都渋谷区神南1丁目9−11 インタービル2 5F)
という事で、今回はメイキングというより、橋本さんのご紹介とタワレコの関わりが中心になりましたが…実は、昔話に花が咲いて写真を撮り忘れました……。
橋本徹さんの記念すべきコンパイラー人生30周年を祝う企画ですが、今後も他レーベルやアナログの発売など年間を通して続くそうです。
そして、来年はFree Soul 30周年と、今年から来年にかけ、改めてご一緒することが増えることを祈りつつ、本日のメイキングを閉めさせていただきます…。
改めて30周年おめでとうございます。
完成したポスターはこちら!